明太子づくりの出発点
やますえの明太子づくりは、厳格な目利きによって選ばれた原卵から始まります。職人自ら入札会場に出向き、卵の鮮度はもちろん、サイズ、色合い、成熟度まで、自社独自の基準で細かく見極め、最適なものだけを仕入れています。
やますえが仕入れるのは、アメリカまたはロシアで獲れた助惣鱈の卵。漁獲直後に船上で処理され、その場で凍結された鮮度抜群の卵のみを使用します。これこそが、粒立ちの秘訣です。


塩漬け
明太子づくりは、まず原卵を塩漬けし、「塩たらこ」へと仕立てることから始まります。
やますえでは、職人が毎日原卵一つひとつに直接触れ、その日の状態を見極めながら塩加減を調整します。自然が育んだ卵の個性――成熟度や質感を、手の感覚で感じ取るのです。ここにこそ、長年積み重ねた経験と知識に裏打ちされた職人の技が活きています。時折やさしく混ぜながら、じっくりと時間をかけて漬け込むことで、塩の角がとれたまろやかな味わいの塩たらこが出来上がります。
辛子漬け
塩たらこから辛子明太子へ。明太子の味を決定づけるのが、「辛子漬け」と呼ばれる調味液による工程です。やますえでは自社オリジナルの調味液を使用します。調味液のベースとなるのは、鰹と昆布の出汁。まろやかな旨味が、明太子の味をやさしく支えます。
そして二つの伝統――糸島の老舗酒蔵・白糸酒造の清酒「芳醇」とカノオ醤油の本醸造醤油「すみれ」。
白糸酒造の清酒は、石の重みでゆっくり搾る伝統製法「ハネ木搾り」により雑味が少なく、ふくよかな甘みが調味液に奥行きを与えます。
カノオ醤油の醤油は、火入れによって引き出される上品な香ばしさが味のアクセントとなり、辛子明太子に豊かなコクと深みを加えます。

白糸酒造は安政二年創業、糸島の歴史ある老舗酒造。石の重みで搾る「ハネ木搾り」の酒は、明太子に上品なコクと豊かな風味を引き立てます。


カノオ醤油は明治二十二年創業、糸島市加布里の老舗醸造元。伝統の麹文化で仕込む本醸造醤油は、明太子に深い旨みと香りの調和を生み出します。

さらに特製の唐辛子は、ひと口目にほどよい刺激を、続いて広がる出汁の香りとともに、スッと抜けるような後味を演出。「またひとくち」と手が伸びる後引く味わいを、時間をかけてじっくりと漬け込みながら仕上げていきます。手間を惜しまず、素材一つひとつと真摯に向き合う姿勢を貫くことこそ、やますえの明太子が美味しいと言ってもらえる一番の秘訣なのです。
すべての工程に職人の心と技が込められた、やますえの辛子明太子。素材と調味、それぞれの出会いが、一体となって深い味わいをつくり上げています。
選別と整形
原卵から塩たらこへ、塩たらこから辛子明太子へ。辛子明太子をつくるには、そのすべての工程で職人の手と目を要します。
夾雑物といわれる「明太子に必要のない余計なもの」を取りのぞくとき、原卵の成熟度合を職人が確かめるとき、皮が破れないよう、形を崩さないよう、重さに偏りがでないよう、盛りつけるとき。これらは、ひとの手だからこそできる大切な工程で、省くことはできません。大変な手間と根気のいる作業です。
選別を終えた辛子明太子は、最後の仕上げとして、ひとつひとつの大きさや形を丁寧に見極める“整形”の工程を行います。一本物の美しい姿のものは贈答用に。形が崩れたものや切れ子は、量販店向けや家庭用の商品として。それぞれの明太子にふさわしい“居場所”を見つけることで、どの明太子にも価値が宿ります。



食卓へ
鮮度を保つことが求められる辛子明太子は、全行程において卵の表面温度が10℃を超えないよう管理し、鮮度を保っています。明太子の状態を最優先とするこれらのこだわりが、やますえの明太子の味を支えています。整えられた明太子は、品質を守る適切な温度と包装で、新鮮なままお客様の元へ。贈り物としても、毎日の食卓でも、「また食べたくなる」味を安心して楽しんでいただけるように、心を込めてお届けしています。手間を惜しまぬ仕事と、食べる人への想いが詰まった一品です。